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美術折々_301
いつともなく完成は始まる
昨日10月26日(月)からアートスペース貘にて、僕の個展『元村正信 │ 非天使 テンシ二アラズ』が始まった。毎年この時期に個展を企画してもらっているので、いつものことだが、暑い夏の真っ盛りに制作はピークとなる。できるなら夏は、何もせずにぼーっとしていたいと思っている人間だから、なおさら制作は進まない。
それでも完成を目指して描かねばならないから難儀なものだ。ただ「完成」というのはどこまでも主観的かつ恣意的なことだから、あくまで自分がもうここでイイと思えるところまでたどり着いたかどうか、ということに過ぎない。
真の完成は、作者以外の他者から見られることによって〈始まる〉のだと、僕はかんがえている。
そう「完成が始まる」のである。だからどこまで行っても「完成」に終わりはないのだ。それは遥か未来をも含めて。それは「絵画」のことだけでさえ、そう言うしかないのだから、ましてやプロジェクトワークのようなものは、よりいっそう「未完性」がつよいことは言うまでもないだろう。とにもかくにも、個展は始まった。
そとに向かっては「 非天使」とはどういうことか、などと言葉を連ね公開してはいるけれど。ほんとうは僕は何も語らず黙ったまま、ご覧いただける方々にゆだねればいいことなのに。それでも色々聞かれ問われれば、声や言葉を通してお答えしなくてはならないことも多くある。
そもそも「芸術の理解」というものに、正解というものはないのだから、誤解や誤読もあって当然なのだが。
発表するということは、そういう別の難儀さがつきまとう。まあそれは仕方のないことだ。
もしお時間あれば、お立ち寄りください。
▲元村正信展2020より