元村正信の美術折々/2020-08-02

明日なき画廊|アートスペース貘

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美術折々_289

あたらしい自由な世界が


「利子」の誕生から約800年。いまでは超低金利どころか「金利の死」が世界に広がっている。
すでに「成長」はゼロ以下であるのに、それでも貧富の格差は新型コロナ下にあっていっそう
その二極化に拍車をかける。実体経済は悪化する一方で、株価の回復や金市場の最高値はなんだ。
新型コロナウイルスの感染拡大がもたらしたのは、金利の死だけではない。

ついに日本の赤字国債は1146兆円を超え膨張を続ける。これは国内総生産(GDP)の2倍にあたる。
現在の負債は未来へ限りなく先送りされるばかりだ。倒産と解雇、失業は常態と化し、すでに資本と労働の分配構造は破壊されてしまった。

リモートとかオンライン化で働き方も変わっていくというが、それは大小を問わず資本の論理だ。
労働時間は見境なく生活の隅々にまで浸透している。
在宅勤務や副業の自由化はいっそう生活と仕事との境界を無化していくことだろう。

さらに利潤率の低下は、ますます労働をAIによってロボット化し人間を必要としない労働の
システムによってカバーしようとする。だから新型コロナウイルスの感染拡大は感染者や重症者、
死者数の増加が怖いだけではないのだ。同時に進行する個人消費の減退と経済の空洞化が
未来の「利益」をすでに現在の債務に否応なく変えようとしているからだ。

それでも、デジタル化で加速する世界企業の3割は増益を上げていることをどう理解すればいいのか。
こここにもまた二極化が生じていることを。世界のこの感染下にあってもである。

私たちは何を恐れ何に鈍感になっているのだろう。そしてその水面下で拡大する格差や差別の肥大。
数の支配や価値は、なにもいまさら始まった訳ではない。
効率といい生産性といい、合理化という名において私たちを序列化し階層化してきたもの。

利子にも金利にも縛られることのない、もっと「自由」な資本主義世界がいま訪れようとしている。
それはもっと貧しい世界なのか。いやもっともっと富裕な人間だけの世界なのか。
うっすらといま見えかけているようだ。そこに否応なく広がろうとしている私たちの光景が。

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