元村正信の美術折々/2020-04-07

明日なき画廊|アートスペース貘

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美術折々_265

餓えた夜の 花びら

もうすぐ春の夜の とばりがおりてゆく
そのかたわらで ただ 数だけがカウントされている

わたしだって濠に散っていく薄桃色の花びらを数えているのに
それでは数がたりない 追いつかないのだ

最悪の数は つぎの最悪の数によって塗り替えられるというのに
散る花びらだけでは足りない ならば急ぎの花びらをつくろう

あの濠が闇に溶け込むまえに 花のかたちをした 数をつくろう
でも焦ってはいけない 気色ばむ数は 花びらを偽装するから

どこまでわたしたちは 数というものに 支配されなければならないのだろう
少なければ 叱咤され励まされ 多ければ 喜びほめちぎられてきた数

いつしか そんなスタイルに馴染んできた とにかく数だ 結果だと
しかし数はあくまで強制ではないという 要請だと
じゃあ これからはひとりでいいんだ 少数でいいんだ 多数はやめよう

だって多数が 最悪を招くのだからと 言われるから ひとりでいよう
もうこれからは 何も見まい 口も聞くまい 動くまい 耳も閉じて

ただひたすら 閉じこもり 引きこもろう 次のつぎの春がきたとしても
ただひたすら そうやって 散った花びらが じぶんを数える
そうやって 黙りこくった生が 餓えた夜に おりてゆく

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