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美術折々_191
しかしどこへ
どこからか、だれかが、何かを叫んでいる。それが母語なのか、もしくは人間のこえなのか。
でもこの耳には、たしかに届いているのに。見えない。わからない。わからないままに。
そうやって、おそれわからないまま朝を迎えた。それでもまだ何かを叫ぶものがいる。
それは訴えなのか、何かの知らせなのか、予告なのか、通告なのか、わからない。
わからないままに、すぐさま夜さえ戻って来た。まだ朝だと言うのに。
まさかこれが最後の伝達なのか。夜と朝が重なり合って狂おしく叫ぶ。
いまたしかに「ニゲロ!」と聞こえた。しかしどこへ。どこにその場所があるというのだろうか。