元村正信の美術折々/2018-06-13

明日なき画廊|アートスペース貘

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公立美術館の存続と未来の形


現在どちらもリニューアルのために休館中の、京都市美術館と福岡市美術館。

京都市美術館の再整備事業工事費は約93億9000万円で落札されている。同市は再開後の名称となる「京都市京セラ美術館」のネーミングライツ料の対価として約50億円(50年間使用)を資金調達してこれに当てている。長く親しまれてきた「京都市美術館」の名称変更については、なおも賛否両論に別れたままだ。

一方の福岡市美術館は、ご存じの通りPFI方式を採用 した。これは公募によって選定された民間事業者が、実施設計以後の資金の調達から建設、維持管理さらに美術館運営までを一括して行う手法だ。その落札価格は約99億8800万円超。ほぼ100億近い金を今後15年間に渡って福岡市民及び利用者は民間事業者へ、いわば「分割返済」して行くことになる訳だ。再開後も所有権は福岡市美術館にあるが、施設の運営権は新たに設立された特別目的会社「福岡アートミュージアムパートナーズ株式会社」が持つことになる。

いずれにせよ、京都市も福岡市も長く自治体が所有し運営してきた市独自の「美術館」でありながら、市予算だけでは賄えない多額の工事資金不足と地方活性化への過剰な要請が、いっそう官民協同・規制緩和の国家的施策に同調して行く結果となってしまった。

これは日本の多くの公立美術館が今後直面していく問題だろう。アミューズメント化する賑わいの創出とあらゆる施設の観光化への期待。その時、美術館の存続と主体性の保持は大きな矛盾として、おそらく露呈するに違いない。

それでも、私たちが本当に望み、必要とする「美術館」とは、その先にいったいどのような形としてあるのだろうか。

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