元村正信の美術折々/2018-05-30

明日なき画廊|アートスペース貘

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ひとつの目印


そもそもなぜ、たったひとつの〈真実〉しかないはずなのに。それがまるで、ふたつの真実があるかのような対立が許容され続けるのか、どこまでも。

それほど私たちは、いつだって小さく弱くそして無力なのか。確かにそうかも知れない。かつてなぜ父たちは、母や子の前でささやかな夕餉の食卓をひっくり返したのか。それは誰の目にもじゅうぶんに理不尽であり、暴力でもあった。

いま思えば、いったい何に怒っていたのだろう。むろん母や子に、この世の不実をぶつけていた訳でもないだろうに。やはり父たちも小さく弱く無力だったに違いない。そこでも、「ふたつの真実」が対立していたのだろうか。

いくら真実に怒りをぶつけても、届きはしない。怒りの矛先は、じぶん自身に向けるしかないのだ。じぶんという人間が、怒りそのものとなった時に〈真実〉そのものが炎上すること
だろう。それがたったひとつの真実というものの、目印なの
だから。

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