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美術折々_68
夏の「宿題」
いつも言っていることだが、僕にとって「美術」というものは、かつてあった美術ではない。
まだ見ぬ「美術」であり、そのようにあろうとする作品である。
それと同じように、僕にとって「絵画」とは、ありえない「絵画」がいま正に、ここに「絵画として」在る
ということだ。ありえないものが、ある。これは一見矛盾しているようだが、そうではなく、かつて
あり得なかった絵画が、いま眼のまえに紛れもなく「絵画」として立ち現れた、ということなのである。
別の言い方をすれば、僕にとって「絵画とは、絵画ではない『絵画』である」といってもいい。
なぜそれが、「絵画」でなければならないのか、と問うことをとおして「美術」というものを
考え抜いてみたい。
ひと夏の動揺をくぐり抜け、もうすぐその「宿題」のひとつが出来上がろうとしている。