元村正信の美術折々/2019-05-04 のバックアップ(No.1)


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美術折々_207

絵画ならざるもの[その三]

矩形(くけい)。すべての「角」が直角である四角形。余りにもありふれた重力と強度の苦しみの下で。
ながいあいだ散々耐え抜いてきたというのに。たとえば光はいつだって窓を境にその内と外に溢れるているのに。
それでも〈窓自体〉が、光によって成されたことなどない。

だから〈矩形〉もまた同様に。それ自体でみたされることが、これからあるのだろうか。
だから〈絵画〉は、その矩形の完全なる悲嘆の内側で、芸術の名の下に幾億と描かれてこれたのだ。

はじめから矩形は空洞だった。空洞ゆえに、自らが受けとめる重力と強度の苦しみに、限りなく蒼白でありながら。
それだから絵画は、さらに何かをそこに描きた足そうとするのか。厚顔無恥なるものの欲望の果ての。

それでも、この矩形という青青とした万物の永遠の苛立ちを、絵画というものはいまだわかってはいない。
なぜなら矩形とは、絵画そのものの支持体でありながら、絵画からもっとも遠い感情の源泉なのだから。

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