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美術折々_222
青い飴色のムチと夏
それは私たちの身体からだけでなく、その荒涼とした風景からも汗が噴き出していた。
塩の結晶が街のあちこちに、まとわり付くようにできている。ここはデスバレーか。
日々は猛暑で、それはもう亜熱帯化した日本といっても言い過ぎではないだろう。
殺伐とした人身に、これでもかと自然は追い討ちをかける。もちろんこの自然とは
私たちがつくり出したものだし。気象変動などと他人事ように語ってはうなずく
長閑な夏ここにありや。
高度に偽装され欺瞞化したこのシステムを生きるには、それなりの覚悟が必要だ。
それはあらゆる甘言が、もてなしがサービスが、特典が、期待が〈税込〉であるということからも。
透明性を担保されたものほどあやしいものはない。疑い深い人間ほど、こころは清らかで。
だからこの社会からは、すぐに弾かれ疎まれるものとしての私たち。
さあ明日も亜熱帯の都市へ出ていこう。噴き出る荒涼とした汗を舐めながら。
虚偽と負担の、五倍化の要求に挫けそうな私たちを、どうか救いたまえ青い飴色のムチと夏よ。