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美術折々_202
絵画ならざるもの[その二]
おそらく始めに、手に着いた〈血〉はヒトに、大地に、岩に、草木に、擦りつけられたであろう。
これが最初の顔料ともいうべき〈絵具〉の発見だったのかも知れない。
しかしここにはまだ描かれるべき〈絵〉すらない。
あの「ショーヴェ洞窟」でさえ、3万5000年程まえのもの。
じゃあ、「洞窟画」以前に〈絵〉はなかったのか。あったとおもう。
ではいまだ発見しえない〈絵以前〉には、何があったのだろう。
〈何を〉刻んでいたのか。〈なぜ〉刻印していたのか。
最古の〈石器〉は、約300万年前ほど前にはあったというが。
しかし単なる〈石ころ〉は、もっと前からあったし、〈骨〉だってそこかしこに転がっていたはずだ。
遥か《芸術以前》にあったはずの、何かの痕跡のようなもの。
でも、なにも残ってはいないから。しかし残ってはいないものの中に《絵画》の、どこまでもたどれない起源がある。