元村正信の美術折々/2017-04-28
をテンプレートにして作成
開始行:
……………………………………………………………………………………………………………………………………
美術折々_95
~
〈缶〉あるいは〈肉体〉
~
一昨日の、静かすぎる雨の朝。 そのまどろみを不意に打ち破る...
思わず窓のそとを見た。
大きな袋一杯のアキ缶を天秤ばりに抱えた自転車乗りのジイさ...
すぐさま軽トラの運転手と同乗者が降りてきて、倒れたジイさ...
さらにその叫び声を聞き付けて、近くの若い警官までが駆け付...
ジイさんはそのあいだ何か怒鳴っていたが、どうやら怪我もな...
警官はしばらく双方の事情を聴取してはいたが、やがて散会す...
僕はしばらくそのまま何を見るということもなく、ぼんやりと...
そうなのだ。突然、若葉をぬらすやわらかな雨を切り裂いた、...
いったい誰に向けられていたのか。押しつぶされたのは、袋一...
あらゆる慈悲と差別の不均衡によってつぶされた〈声〉も、挙...
だから、ジイさんのひしゃいだ〈缶〉は、多くの負い目を刻ん...
〈奇声〉とは声にならない声という、ひとつの怨讐の声でもあ...
窓のそとのすれ違い。ひとり去っていった自転車乗りのジイさ...
もしくは、缶あるいは肉体の転倒。
四月も終わりに近い、そぼ降る雨の朝のことだった。
終了行:
……………………………………………………………………………………………………………………………………
美術折々_95
~
〈缶〉あるいは〈肉体〉
~
一昨日の、静かすぎる雨の朝。 そのまどろみを不意に打ち破る...
思わず窓のそとを見た。
大きな袋一杯のアキ缶を天秤ばりに抱えた自転車乗りのジイさ...
すぐさま軽トラの運転手と同乗者が降りてきて、倒れたジイさ...
さらにその叫び声を聞き付けて、近くの若い警官までが駆け付...
ジイさんはそのあいだ何か怒鳴っていたが、どうやら怪我もな...
警官はしばらく双方の事情を聴取してはいたが、やがて散会す...
僕はしばらくそのまま何を見るということもなく、ぼんやりと...
そうなのだ。突然、若葉をぬらすやわらかな雨を切り裂いた、...
いったい誰に向けられていたのか。押しつぶされたのは、袋一...
あらゆる慈悲と差別の不均衡によってつぶされた〈声〉も、挙...
だから、ジイさんのひしゃいだ〈缶〉は、多くの負い目を刻ん...
〈奇声〉とは声にならない声という、ひとつの怨讐の声でもあ...
窓のそとのすれ違い。ひとり去っていった自転車乗りのジイさ...
もしくは、缶あるいは肉体の転倒。
四月も終わりに近い、そぼ降る雨の朝のことだった。
ページ名: