…………………………………………………………………………………………………………………………………… 美術折々_144 ~ 不思議な国の子 不思議な子の国 ~ 母いわく。 「石炭は、軽くて艶があって、真っ黒い」。 「ボタは、石みたいに重くて、艶がないし色も悪い」。 昨夜、はじめてこの話を聞いた。 それももう75年ほど前の、戦時中のことだ。 戦争のことは、これまでも母からは色々聞いてはいた。 そしてその話の最後に、ぽつりとこう言うのだった。 「不思議な子供が生まれたもの」だと。 むろんこれは、不肖、僕のことなのだが。 でもなぜか、その「子供」が僕には戦後のこの日本の、この国のことに思えた。 そう響いて聞こえたのだった。 しかしその「不思議」さは、石炭もボタもそれに絡んだ全ての利益と残虐を廃絶してもなお、生き延びる「国家」というものの、今のいびつなこの国の相貌以外の何ものでもないだろう。