*美術折々_05 美術折々_05 春の雨 どんよりとした灰いろの空から降る、肌をぬらす柔らかな雨。 こんな午前の、遅い朝でも人影はすくなく、水辺もひときわ静かである。 濡れ落ち葉を掃く箒の慣れた音だけが、耳もとに届いてくる。 アスファルト。不意にひとりの男から行く道をさえぎられた。 いま撮影中なので、少しだけお待ち下さいという。通行止めだ。 どれ位待つのか、一瞬尋ねたかった。 すると、目の前をコートを着たモデルらしき若い女性が傘も差さず歩いていく。 すぐさま、「カ-ット!」、「もう一度!」の声が響く、そして通行止め解除だ。 「すみませんでした」と、男がこちらにひと言。 何かがぎこちない。 まだみな目覚めていないような、もの静かな雨の撮影現場。 映画ほど機材やスタッフの数も大袈裟ではないので、 何かのコマーシャルかプロモーションものなのだろうか。 まさかこんな雨の朝を待っていたのか、いやいや、たまたま今朝が雨になった ということだろうと、独り言ちて再び歩き始めたのだった。 ~ ~