…………………………………………………………………………………………………………………………………… 美術折々_303 ~ だれもいない空洞だけがまぶしく ~ この昼の 澄みわたる青空の下 穏やかな都心の公園の中心に ぽっくりとあいた大きく平らな真砂土の空洞がある それでも子供も大人も そこで遊び戯れようなんて思いもしないし 寄り付きもしない土曜の昼すぎ だからそうやっていつしか空洞になったのだ その円形の空き地を囲むようにして 朽ちかけた木製のベンチが並び それを背にして植えられた樹木の連なりを見渡せば 結局それが公園 でも人はそこを避けるから それでも公園なのだろうか ぼくはそのベンチのひとつに座って この空洞の中心をずっと見つめていた だが本当はそこに中心なんて無いのだ この空しさは何なのだろう 唐突だが この空しさに応えられる「絵画」はどれほどあるのだろうか そのとき じぶんの絵画をふとおもい浮かべていたのかも知れない まぶしい秋の晴れ間の光だけが だれもいない空洞をいっそう照らし たたえていた