元村正信の美術折々/2020-06-02 のバックアップの現在との差分(No.1)


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美術折々_277
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4年半もの空白は、ありか
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福岡市の天神にある「ジュンク堂書店福岡店」(2060坪・約140万冊)が、いよいよ6月末で閉店することになった。
入居するビルの再開発によるもので、2024年末に開業予定の新ビルに再出店する予定だが、「再出店時の店舗規模は、現状から縮小する可能性もあるという」(5月29日付 西日本新聞朝刊)。同福岡店は九州最大規模で、ちなみにジュンク堂池袋本店(2000坪・約150万冊)、丸善・ジュンク堂梅田店(2060坪・約200万冊)と比べても小さくはない。確かにアマゾンのようなネット書店の利用によって、ジュンク堂も池袋や梅田そして福岡といった巨艦店舗は苦戦しているとは聞いてはいたが。
福岡市の天神にある「ジュンク堂書店福岡店」(2060坪・約140万冊)が、いよいよ6月末で閉店することになった。入居するビルの再開発によるもので、2024年末に開業予定の新ビルに再出店する予定だが、「再出店時の店舗規模は、現状から縮小する可能性もあるという」(5月29日付 西日本新聞朝刊)。

同福岡店は九州最大規模で、ちなみにジュンク堂池袋本店(2000坪・約150万冊)、丸善・ジュンク堂梅田店(2060坪・約200万冊)と比べても小さくはない。確かにアマゾンのようなネット書店の利用によって、ジュンク堂も池袋や梅田そして福岡といった巨艦店舗は苦戦しているとは聞いてはいたが。

昨年から僕はてっきりどこかに仮店舗を構えるものと思っていた。それが「仮移転を断念」ということになったらしい。同じ場所にできる新ビルへの再出店まで4年間もの空白は、単にひとつの書店の閉店だけの問題ではない。人口160万人程度の福岡市という地方都市で大規模書店がなくなる影響を、都市再開発の施策として『天神ビッグバン』などと謳う福岡市をはじめ、地場企業や学校関係者そして市民や利用者はどう受け止めているのだろうか。

いまのところそれに対する反応や仮移転先として受け入れを検討したいとする声などがほとんど表立っていないのは不思議なくらいだ。1990年代以降、どこの町にもあった小さな書店は半減し、こういった大規模書店がリアル書店として生き残っている訳だ。もしろん最近では若い人たちが営む、ネット書店や特色のある独立系のリアル書店も増えてはいるのだが。
いまのところそれに対する反応や仮移転先として受け入れを検討したいとする声などがほとんど表立っていないのは不思議なくらいだ。1990年代以降、どこの町にもあった小さな書店は半減し、こういった大規模書店がリアル書店として生き残っている訳だ。もちろん最近では若い人たちが営む、ネット書店や特色のある独立系のリアル書店も増えてはいるのだが。

大規模書店の魅力は、なんと言ってもぶらぶらと店内を上へ下へ時間をかけて歩きながら、大量のいろんなジャンルの本を眺めては手に取りページをめくっては未知の発見をし、一冊の本と出合うということに尽きる。それを不便、時間の無駄だと言われようが。購入するだけの本なら、それこそネットで注文すれば手っ取り早いのだから。

福岡というのは、よく「文化不毛の地」とも言われてきた。まあ今でもそうか。美術や芸術もそう言われているかも知れない。そのことは、こうして小さくはない一つの書店が無くなろうとしても、何の抵抗も支援もなく地元からの移転援助策もなく、ただ惜しむ声だけで済ます。なにも無かったかのように。

ジュンク堂によれば、天神だけでなく福岡都市圏にまで仮移転先を広げたが物件が見つけられなかったという。これは単に「地域経済に影響しそう」などという集客効果や需要減の問題ではない。どこか奇特なビル所有者や企業家はいないのか。ジュンク堂の救済ではない。私たちは大量の本の中から、たった一冊の本と出合う機会をみすみす手放していいのだろうか。

「文化芸術振興ビジョン」を策定するのもいいが、〈本〉の集積を〈書店〉を大事に思わない、文化と同じように思えない風土など、不毛と呼ばれても仕方ない。
新型コロナウイルスの影響のせいにして済まし、そのように片付けていいのだろうか。「再開発」とは、それまであったものをたやすく喪失することなのだろうか。
新型コロナウイルスの影響のせいにして済まし、そのように片付けていいのだろうか。
「再開発」とは、それまであったものをたやすく喪失することなのだろうか。