元村正信の美術折々/2020-04-07 のバックアップソース(No.1)

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美術折々_264
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餓えた夜の花びら
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もうすぐ春の夜の とばりがおりてゆく
そのかたわらで ただ 数だけがカウントされている

僕だって池に散っていく薄桃色の花びらを数えているのに
それでは数がたりない 追いつかないのだ

最悪の数は 次の最悪の数によって塗り替えられるというのに
散る花びらだけでは足りない ならば急ぎの花びらをつくろう

あの池が闇に溶け込むまえに 花のかたちをした 数をつくろう
でも焦ってはいけない 気色ばむ数は 花びらを偽装するから

どこまで私たちは 数というものに 支配されなければ ならないのだろうか
少なければ 叱咤され励まされ 多ければ 喜びほめられてきた 数

いつしか そんなスタイルに馴染んできた とにかく数だ 結果だと
しかし数はあくまで強制ではないという 要請だと
もうこれからは ひとりでいいんだ 少数でいいんだ 多数はやめよう

だって多数が 最悪を招くのだからと 言われるから
もうこれからは 何も見まい 口も聞くまい 動くまい 耳も閉じて

ただひたすら 閉じこもろう 引きこもろう 次の春が来るまで
ただひたすら そうやって 散った花びらが じぶんを数える
そんないちにちの生も やがて餓えた夜に おりてゆく
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