元村正信の美術折々/2020-02-17 のバックアップ(No.1)


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美術折々_257

「創造史」という近未来の見方

アーティストで東京造形大学特任教授の沖 啓介氏が、2月16日付 FBで昨秋の改装で開館100周年を経たニューヨーク近代美術館のリポートをUPしていた。
それによると「今回は現代美術からさらに多様化している表現への変化を象徴し、空間のスケールは多様化、複雑化し、従来の絵画や立体作品の間に映像、インスタレーション、建築、写真、デザインが入るようになり、美術史というより創造史へと認識を新たにしているように感じる」と報告している。

僕はこの「美術史というより創造史へ」という彼のあらたな受け止め方に興味を持った。これは当然のようにこれまで続いて来た特に近代から現代までの〈美術史〉という枠組や時間概念だけでは「作品」というものがまたその収集と展示が、もはや捉え切れなくなってしまっていることを実感してのことだと思う。

それを取り敢えずは「創造史」として呼ぶしかない、ということだろう。もちろんこれを単純に「芸術史」として括るわけにはいかないが。それでも沖氏が紹介するように、たとえば実験映画作家のマヤ・デレン(1917-1961)の映画が絵画の展示のなかにあったり、舞踏家のマース・カニンガム(1919-2009)のダンスも美術作品のなかにあったということを見ても、うなずける。

これだけでもすでに展示の中ですら「美術概念」もまた拡張、再編されているということになる。ただそれが文字通り〈創造〉としての捉え直しなのか、それとも〈美術史以後〉の表現の拡散と混迷そのものを「収集/収拾」するためのものなのか。いずれにしろ、MoMAもまた「美術/芸術」の現在と近未来をまえに、〈芸術以後〉にまでその射程をひろげようとしていることは確かだろう。

なお、沖 啓介氏のリポートには、氏の手による61点の写真も添付されている。関心のある方は、FBでどうぞ。