元村正信の美術折々/2019-10-01 のバックアップ(No.1)


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美術折々_232

〈再開〉の残念さ

「あいちトリエンナーレ2019」の中の例の企画展「表現の不自由展・その後」の展示が会期終盤の10月6日〜8日の3日間の予定で条件付きながら再開されることになったと9月30日付の共同通信が報じていた。しかしいまさら何だ、と言うしかない。一部市民による脅迫に始まり開幕早々の中止。政治に翻弄されながら「表現の自由」問題から、政府の圧力による補助金の不交付まで。けっきょくこの夏の日本列島は「自由と不自由」への無関心に覆われていた。あの香港市民の抗議デモや抵抗に比べれば、この国の「平和」と呼ばれるものの鈍感さには呆れるしかない。

またひとつ私たちは、「自由」への問いを手放してしまった。テロや暴力の予告という脅しにも、たやすく屈してしまったのだ。現実の圧力以上に、見えない圧力は私たちが想像する以上に大きいことを、今回の「表現の不自由展・その後」の展示中止問題は教えている。いまさらの、茶を濁したような〈再開〉という合意を残念に思うばかりだ。議論もまた、こうして風化して行くのだろう。