元村正信の美術折々/2019-06-06 のバックアップソース(No.1)


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美術折々_213
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水のないプール追想
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すでに周知の通り6月3日、美術史家・本江邦夫氏(多摩美術大学美術館長)が亡くなられた。
僕にとっての本江さんは、彼が東京国立近代美術館の研究員になって3年目くらいだったと思う。まだ30歳だ。その頃、美術手帖の展評欄も担当されていて、僕の東京・真木画廊の個展「水のないプール」を見て下さり、同誌1978年11月号の展評で取り上げていただいたことがあった。画廊近くの日本橋室町の喫茶店で、作品について話し込んだ思い出がある。もう41年も前のことだ。


この頃は、透明ビニールを重ねていくような作品だった。ちなみにこの個展タイトル「水のないプール」は、その4年後の1982年2月に公開された若松孝二監督、内田裕也主演の同名映画があるが、僕の当時の個展作品とは無関係である。


ともあれ、僕の作品に目を留めてくださったことをここで改めて感謝したい。そして本江邦夫氏の急逝を悼むばかりである。安らかに。


それでもいま美術手帖は、「80年代・日本のアート」と振り返る。80年代に「アート」はあったのか。あったとしても、まだ「美術」ではなかったのか。「現代美術」ではなかったのか。本江さん、どう思いますか。