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美術折々_103
「振興」が消えた日
例の「加計学園」問題が、すこし話題程度にはなった先の国会。その閉会直前の今月16日の参院本会議に
おいて、地味に「文化芸術振興基本法」(2001年公布・施行)の改正案が、名も改め「文化芸術基本法」
として可決された。
わけても、今回あらたに「食文化」の「振興を図る」、という項が「生活文化」の中にわざわざ追加されている。
じつはこれまでこの「生活文化」には、(茶道、華道、書道その他生活に係る文化をいう。)という項目
しかなかったのだ。そこに「食文化」が仲間入りしたわけである。また、もともとこの基本法では、
茶道、華道、書道が「芸術」としてではなく「生活文化」として位置付けられていることに違和感を覚える
人も多いのではないだろうか。むろんそこは、議論の分かれるところでもあるのだが。いずれにしても、「芸術」の概念が問われなければ、何も始まらない。
しかし、食。いまさら改めて定められてもと言いたくなるほど、すでに広く「食は文化」ではなかったのか。
早くもある広告のキャッチコピーには、「食を、芸術へ高める国。」と謳い讃えていた。
僕は、食は日々の食であり、芸術などというものに〈変形〉されて欲しくはない、と思っているものの一人
である。まあそんなことは、どうでもいいのだが。要は国の地域振興策に生活や文化芸術を積極的に駆動しようというわけだ。
でも何かがちがう。食って、寝て、遊んで、そして働くという当たり前のそれぞれの日常が、どこか知らない
遠くから必要以上に励まされ、元気づけられ、鼓舞されているように、僕にはそう思われてならない。
それともう一つ。同法の基本的施策の中の必要な施策の例示に、あらたに「芸術祭の開催」などへの支援が
追加され、さらに地域の振興を図るための「芸術祭への支援」も追加されている。その他にも国際交流の推進や人材育成等の支援も加わった。多いに結構けっこう、ということなのだろう。
2000年に始まった越後妻有アートトリエンナーレを始めとして、いまや大小含め200を超すと言われる
全国各地の「芸術祭」。
僕が言いたかったのは、じつは「文化芸術振興基本法」の改正で同時に追加された、この「芸術祭への支援」
というものと地域振興との「関係」のことなのだが、これはまた改めて触れてみたい。