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美術折々_255
鈍くかがやく光沢よ
昨年11月にアートスペース貘で写真家・津田 仁の個展「名のない時」をみて、欲しい作品があった。
いつもカネのない僕のこと。買えないので、元村の作品と交換するということでどうですか、と頼んでみよう。
そうおもい貘のオーナー小田さんを介してその旨を伝えてもらうと、津田さんから「いいですよ」とのうれしい
返事をもらった。彼はわざわざ自ら再度プリントし直してくれたのが、暮のこと。
あとはいつでも渡せます、ということだったのだが。
肝心の僕は、じぶんの作品を旧作から選ぶか新作にするかで迷う。
そうこうする内に年も明け、やっと1月も終わる頃に屋根裏 貘で津田さんに会え、遅そすぎた新作を渡し
目出度く交換あいなったしだい。
僕は気に入った写真を手にしたが、いっぽうの津田さんが僕の小品を気に入ってくれたかどうかは分からない。
彼は「いいですね」とは言ってくれたが、どうだろうか。いまもって不安は残ったままだ。お許しを。
津田 仁の写真「名のない時」から、この一点。
打ち捨てられた土地に鈍く光る一片あり。その向こうに山あり、そのさらに遠く霞む山あり。
ここに転がるのは朽ちかけるものか、それとも光をたくわえ飛翔を待つものか。
そう何度もひとり反芻しながら。
これからそばに置いて、ながくじぶんの鏡にすることにしよう。
津田 仁「名のない時」2019.1204、
ゼラチン・シルバー・プリント
元村正信「抗い結晶するわたしたちの」
2020.0101、木製パネル・紙・アクリル