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美術折々_264
近しくも遠いもの
「最悪の事態」とは何のことだろう
最悪の先には さらなる未知の最悪があるはずだ
じゃあ人類共通の最悪というものがあるのだろうか
たとえば「最高の美」はどこにあるのだろう
だれもが同時に共有でき感受することのできる
最高の美などあるのだろうか
小林秀雄はかつて
「美しい花がある 花の美しさという様なものはない」と言った
しかもその美しい花は 人それぞれにあって
美しいものは異なるはずだ
それでも だれも経験したことのない事態や美が
この世のどこかにあるのだろうか
それともそれらは これから出合うコトや モノなのだろうか
だったら人類がこれまで経験した最悪や最高とは
何だったのかということになる
それを上回るものを いま想定し あるいは想像して欲しい
という またそれはワタシにとっての最悪か 国家にとっての最悪なのか
そこに 底なしの墜落 と 喩えようのない恍惚を思い描けるだろうか
まるでひとつの最悪があり 最高の美がひとつしか
ないかのように
それでも 最悪最高は 瓜ふたつ あなたはわたしで
美醜で快不快は つね日頃そこかしこにあるものだ
だれの死だって いつも生の先のどこかにあるものを
その近しくも遠い死を 美を きょうの数にして
最悪最高化する
生はもっとたしかに遥かに ビミョーで深淵だから
最悪にも最高にも ひるまないだろう
いつだって最悪は 最悪のその次にやって来る
だから本当の最悪を ひとはまだ誰も知らない