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美術折々_228
「モノリスの向こう」について
モノリス(monolith)という言葉は、もともと古典ギリシア語の「一つ」(mono)と「石、岩」(lithos)との複合語から派生した古典ラテン語形(monolithus)に由来し、「一枚岩」と表されてる。まずはひとつの巨大な塊状の岩や石を思い浮かべて頂ければいいでしょう。また映画『2001年 宇宙の旅』(1968年)での謎の物質、400万年前の黒い石板状のモノリス。
それら古代モノリスに思いを馳せる一方で、現存するモノリスや今にいたる無数のモニュメントといったものと「芸術」はどのように関わってきたのだろうか。さらに現在、彫刻と呼ばれるものはそれらといったいどう繋がりあるいは断絶しているのだろう。それだからこそ、同映画の原作者アーサー・C・クラークが呼んだ「新しい岩」とは、この意味でモノリスを超えて「彫刻」の始まりと同時にその向こうをも想起させてくれるのだ。
おそらく彫刻と呼ばれてきたものがひとつの塊から掘り出され、あるいは新しい塊をつくるにせよ、またそのような塊から離れるにしろ、このモノリス的なものをどこかで意識してきたに違いない。いま彫刻というものは、たえざるその概念への問いの先に「非彫刻」ともよぶべきものを抱え込みながらなおも拡張され続けている。
それはまた非モノリス的なものの方へかも知れない。
今回の「モノリスの向こう」はこれらを踏まえた上で福岡を拠点に活動する二人の彫刻家、近藤祐史と古賀義浩を取り上げた。彼らは、そんな彫刻/非彫刻をめぐる概念や既知の作品とはことなるものをいかに試行し、またそれをどう乗り超えようとしているのだろうか。展覧会のタイトル「モノリスの向こう」は、どうじに彫刻の
向こうでもある。彫刻は、いかに彫刻を超え出ていけるか、未知の領域に踏み込めるか。
そのような視座で彼らの作品を見るとき、それはどのようなものとして私たちの前に立ち現れるのでしょう。
ここで新たな作品をご覧いただければと思います。
ディレクション│元村正信