末藤夕香 展 「S H I M A」
今、いつものグレイッシュなアートスペース貘の床が、変貌しています。
緑青を刷毛目で彩色したようなタイルカーペットが床一面に敷き詰められ、その上には
艶のある鮮やかな大量の色違いの糸が、大小五つ程のふっくらとした塊を成し、それらが
画廊の床に点在するようにして配置されているのです。
そうです。末藤夕香さんの個展のタイトルは 「S H I M A」です。アイランド、島です。
だったらこのエメラルドグリーンに腐蝕されたような床面は、とうぜん「海」と思っていいでしょう。
この上に立つとき私たちは、糸で出来た幾つかの「島」を俯瞰し、それらのシマの周りを巡りながら
いつしか煩雑な日常から、じぶんがふっと浮いているような気分にもなるかも知れません。
末藤さんは言います。島は「悲しみも喜びもすべてのみ込んでゆったりと待っているよう」だと。
この空間はもしかしたら、糸が織りなす孤独な大人の童話なのかしら、と思ったりするのです。
(同展は5月28日まで)