美術折々_326
歌を うたえれば
わけもなく風に吹かれて鼓草
なぜ寂し白木蓮の空のうえ
ひんやりと裏返しふゆ眩しきみ
悪くない休日忘れわれ土筆
しかしその突然の春われ何も
きょうのような そぼ降る雨の日には
じっとしていられるなら それだけで贅沢だと思うが
だがそうもいかない人もいる訳で
だからいつもじぶんの中の〈灰色の海〉を凝視しながら
じぶんのそとの 美しい海をおもい浮かべている
すこし肌寒い春の 雨と潮の匂いをかげたなら
それも贅沢に違いない どんな息苦しさがあるにしても
ただ僕はじぶんの中の〈灰色の海〉を見つめるしか能がない