元村正信の美術折々/2020-06-15 のバックアップ(No.1)


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美術折々_280

ある勧誘へのつまずき

全国150の公立美術館で作る「美術館連絡協議会」と読売新聞オンラインが始めたプロジュエクト「美術館女子」。

これは「AKB48チーム8のメンバーが各地の美術館を訪れ、写真を通じて、アートに触れる楽しさや地域に根ざした公立美術館の魅力を発信していく」という新企画だ。

「地域の美術館の隠れた魅力を再発見する連載」ということで始まったものだ。ところが初回の東京都現代美術館の所蔵作品を背景に公開されたその途端に、ツイッター上ではこの「美術館女子」という言葉に疑問と批判が殺到している。

つまり「女の子」を使って作品との出合い、映え写真をアップするというスタイルと「○○女子」というキャッチがどうやら反発を招いているらしい。

そもそも芸術の理解や楽しみ方といっても、思うほど単純でも複雑でもない。それを「美術館女子」などといって「誰でもアート」へと誘導しそれをスポット化し、これまた女子化する。いかにも軽いノリで地域の美術館に来て親しんでもらおうとする意図が透けて見えるからだろう。

何かここには、時代とのズレがあるような気がする。それが特に女性たちの反感を呼んだのではないか。女子はどこにでもいるし、いまでは老いも若きも「女子化」しているから、それをことさら美術館という権威や制度に同一化させようとすると、このような反発を招くのではないか。

「アートの力」というが、そんな力を簡単に信じられるだろうか。僕にしてもそんな「力」がどういうものかさえよく分からない。漠然と「アート」というものへの好き嫌いや興味はあるにしても。アートの「利用」は、その当事者である美術館の未来に関わることだけに、関心なきものに関心を持ってもらうという甘い勧誘のつまずきは、はたして芸術の道具化への反省になるだろうか。
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