元村正信の美術折々/2017-06-30 のバックアップ(No.1)


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美術折々_103

「振興」が消えた日

例の「加計学園」問題が、すこし話題程度にはなった先の国会。その閉会直前の今月16日に参院本会議において
じつは「文化芸術振興基本法」(2001年公布・施行)の改正案が、名も改め「文化芸術基本法」として可決
された。

また、今回あらたに「食文化」の「振興を図る」、という項が「生活文化」の中にわざわざ追加されいる。
じつはこれまでこの「生活文化」には、(茶道、華道、書道その他生活に係る文化をいう。)という項目しか
なかったのだ。そこに「食文化」が仲間入りしたわけである。でもこの基本法では、茶道、華道、書道が
「芸術」としてではなく「生活文化」として位置付けられていることに違和感を覚える人も多いのでは
ないだろうか。

しかし、いまさら改めて定められてもと言いたくなるほど、すでに広く「食は文化」ではなかったのか。
早くもある広告のキャッチコピーには、「食を、芸術へ高める国。」と謳い讃えていた。
僕は、食は日々の食であり、芸術などというものに〈変形〉されて欲しくはない、と思っているものの一人
である。

まあそんなことは、どうでもいいのだが。要は国の地域振興策に生活や文化芸術を積極的に駆動しようと
いうわけだ。

でも何かがちがう。食って、寝て、遊んで、そして働くという当たり前のそれぞれの日常が、どこか知らない遠くから
必要以上に励まされ、元気づけられ、鼓舞されているように、僕にはそう思われてならない。

それともう一つ。同法の基本的施策の中の必要な施策の例示に、あらたに「芸術祭の開催」などへの支援が
追加され、さらに地域の振興を図るための「芸術祭への支援」も追加されている。その他にも国際交流の推進や人材育成等の支援も加わった。多いに結構けっこう、ということなのだろう。

2000年に始まった越後妻有アートトリエンナーレを始めとして、今や大小含め200を超すと言われる
全国各地の「芸術祭」。

僕が言いたかったのは、じつは「文化芸術振興基本法」の改正で同時に追加された、この「芸術祭への支援」
というものと地域振興との「関係」のことなのだが、これはまた改めて触れてみたい。