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美術折々_63
花火のあとの夜の夢
たとえば丘の上のホテルから眺める花火大会や、お酒を片手に自室から見る花火は涼しげでよいものだ。
一方、打ち上げ花火を真下から見上げるには、蒸し暑い夏の夜の人混みに交じり込むエネルギーがいる。
もちろん若い恋人どうしなら、どんな場所でも気にはならないのかも知れないが。
いずれにしろ夜空に上がる大輪の花火には、この憂き世を一瞬忘れさせてくれるものが、きっと誰にも
あるのだろう。
そんな花火とも無縁な寝苦しい夜には、ビターを利かせキンキンに冷えた火のようなスピリッツを体に流し
込んでみる。どこかはるか遠くで賑わい弾けているであろう光と、響き渡る音のすべてが、どうか僕という
からだの真ん中にも訪れて激しく爆裂しますようにと独り祈りながら、粉々に散り裂けた夢でも見ようか。