大塚咲×夕希 展_のこと
前回、じつはほとんどこの写真展のことに触れていないのに気づいた。
つい少年との出会いに気を取られてしまったようだ。
だから、この展覧会「MEME」のことも少し。
ふたりの女のみを被写体にしたフルカラー作品。
それぞれのセルフポートレートが含まれてもいるが、
写真家・大塚咲の写真展といってもよいだろう。
濃密な吐息、噛みころすような声、火照った肌に滲み出す汗、虚ろな瞳…。
じっとりと湿った、粘着質のものがそこかしこに溢れている。
すべては終ったのだろうか。
不在の女、あるいは男。ふたりの女に迫ったものの性そのものの不在。
いや、ここでは性の根拠そのものが見えないのだ。
朝霧にくるまれるように、いまも雨は降っている。
水辺の情景はすでに霞んでいた。
ついさっきまで愛したひとの姿が見えない。
ふたりの女はいったい何を想い、旅を続けたのだろうか。
冬も終る。そんな雨も、やがてあがるだろう。
同展は3月1日(日)まで。