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アートスペース走り書き_02
亀川豊未 展「Where are we from」
足を踏み入れると、樟の芳香が ほんのりと漂う。
野太くまっすぐ伸びた首にすわった顔が天を仰ぐ。
若手彫刻家・亀川豊未の木彫だ。
若く丸みを帯びたその顔は薄黒く塗られ、そこにはいくつもの条痕が走っている。
ひたいから眉間あたりに集まる青い顔料の斑点は雨滴の跡だろうか。
とじた目のまわりだけが白く化粧を施されその窪みからこぼれたものが
ひと筋の涙のように首筋をつたい落ちていく。
荒く彫りそして塗りまた鋭く刻めば、あとは祈るように待つしかない。
そうだ、天のみをひたすら見つめるわが身の切っ先が、浴びるものすべてを。
今回の個展のタイトル「Where are we from」は、どこからきたの。
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』(1897-1898)
作品にそう名付けたのは、あのゴーギャンだ。
もちろん彼女はゴーギャンではない。それでも「私は何のために生まれたのか」と
自問しつつ、ノートには「彫刻することで何が起こるのか」としるした言葉があった。
自分とじぶんではないものが、日々刻々と立ちかわり宿ろうとしているのだろうか。
そこには春霞のような淡い薄桃色の和紙を貼った木箱の台座が
彼女が全身で彫り刻んだものを、じっと支え、やさしく持ち上げていた。
[〜2月2日迄] (元村正信)
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